駄文・散文帳
2011年11月20日 (日) | 編集 |


弱みはアメリカにあり 
11月16日 田中良紹

 TPPを巡る議論を要約すると、「アメリカに国益を侵されるから反対」「アメリカと組まなければ日本の国益は守れない」の二つに分かれる。一見対立する主張だが、どちらも日米関係はアメリカが強く日本は弱いと考えている。

 アメリカとの戦争に敗れて従属的立場に置かれた日本人が、そうした見方をするのは理解できなくもないが、1990年から10年以上アメリカ議会を見てきた私は「本当にそうか?」という気になる。

 アメリカは世界最強の軍隊を持ち、ドルは世界の基軸通貨で、世界中の資源を押さえ、世界の情報を操作する力を持っている。しかし第二次大戦以降アメリカは戦争に勝った事がない。朝鮮戦争は引き分けで「思い出したくもない戦争」である。そのコンプレックスがアメリカをベトナム戦争に駆り立て、建国以来初めて戦争に敗れた。

 イラクやアフガニスタンでの戦争も勝利したとは言えない。しかもその戦争によってアメリカ経済は蝕まれ、財政赤字が止まらなくなった。かつて盟友のヨーロッパはEUを作ってアメリカと対峙するようになり、ユーロがドルの地位を脅かし始める。おまけにEU諸国間の関税撤廃によってヨーロッパ向け農業製品の輸出もままならなくなった。

 冷戦構造を利用してのし上がった日本に「ものづくり」で敗れ、金融と情報産業に特化して世界を支配しようとしたが、金融商品がアメリカ経済を破綻させ、米国民は今や塗炭の苦しみの中にある。アメリカ資本主義に対する国民の信頼は崩れ、経済の建て直しが最優先の課題である。


 一方で経済の成長力はアジアにある。アメリカがアジア太平洋地域に目を向けてくるのは当然だ。アメリカにとってアジアは死活的に重要で、この地域で何とか覇権を握りたい。それがTPPに力を入れる理由だが、アメリカ主導でこの交渉をまとめ上げる事が出来るかは予断を許さない。アメリカ議会が日本を参加させる事に慎重なのはその懸念の表れである。日本との交渉では思うにまかせなかった苦い過去があるからだ。

 日本はアメリカとの交渉で実にしたたかだった。それを「言いなりになる」と考えてしまうのは小泉政権を見たからである。主張を鮮明にする政治手法は勝つか負けるかのどちらかになる。弱い相手には勝てるが強い相手には言いなりになるしかない。そこがかつての自民党と違う。かつての日本は強い相手から実益を得る術を心得ていた。日米経済戦争に勝ったのはアメリカではなく日本である。

 09年の総選挙で民主党は「アメリカとの自由貿易協定の締結」をマニフェストに掲げ、そのセーフティネットとして「農家戸別所得補償」をマニフェストに入れた。そもそも民主党はアメリカと自由貿易をやる方針だった。それが実現しなかったのはアメリカが二国間交渉を受け付けなかったからである。

 そしてアメリカはTPPという多国間協議に乗り出した。
その真意はまだ定かではないが、一般的には多国間協議の方が交渉は複雑になる。それこそアメリカ主導が実現するかは予断を許さない。一方で成長力著しい中国と技術力世界一の日本が手を組み、そこに韓国が加われば、アメリカはアジアで取り残される。TPPの方が何とか主導権を握れるとアメリカは捉えている事になる。

 だから日米の間でつばぜり合いが始まった。ハワイでの日米首脳会談で野田総理が「あらゆる物品を自由化交渉の対象にすると言った」とホワイトハウスが発表し、日本の外務省は「言っていない」と異例の抗議をした。外務省は「ホワイトハウスは誤りを認めた」と言うが、ホワイトハウスは「訂正しない」と言う。「これまで日本側が言ってきた事を総合して発表したのだ」と言う。

 つまり菅政権が言った事を野田総理が言った事にしたというのだ。
誠に自分勝手な都合の良い解釈だが、これがアメリカの外交のやり方である。アメリカと付き合う時には常に相手が二枚舌である事を腹に収めておく必要がある。アメリカの言った事を鵜呑みにすると判断を誤る。

 これを見て「日本はアメリカに勝てない」と思う者は、「だから交渉に参加してはならない」と言う事になる。しかし参加しないとどうなるか。アメリカが黙っている筈はない。江戸の仇を長崎でという話になる。どこでどんな報復を受けるか分からない。予想のつかない攻撃を受けるのは交渉するより始末が悪い。

 私は今回のアメリカの態度を「弱さの表われ」と見る。野田総理の参加表明の仕方を見て、アメリカのペースにならないと判断したホワイトハウスが、アメリカにとって都合の良い菅政権の方針を勝手に付け加えたのである。そうしないとアメリカ議会や国民を説得できないからだ。

 「だったら徹底して抗議し、発言を訂正させろ」と言う者もいるが、それでは政治にならない。そんなところで肩をいからせたら利益になるものも利益にならなくなる。ここは弱い者の顔を立てて「貸し」を作るのが得策である。

 それもこれも日本国内に強い反対論のある事が一定の効果を挙げているのである。それをうまく使いながら、アメリカ主導に見せかけて、日本がアジアから利益を得られるようにするのが日本の国益である。中国やインドも参加させる方向に持ち込めればTPPも意義が出てくる。

 TPPをアメリカが中国に対抗するための安全保障戦略だと言うピンボケ論議もあるが、中国やインドを排除したらアメリカ経済は立ち行かない。中国やインドをアメリカンスタンダードに持ち込みたいのがアメリカである。それがTPPの行き着く先だと私は思っている。そのプロセスで各国が国益をかけた交渉を繰り広げる。


 アメリカの二枚舌とやりあうには、こちらも二枚舌で対抗すれば良い。にっこり笑って相手の急所を刺すが、しかし決裂するほどは刺さない。それが外交である。ところが国内には敵を間違えている連中が居る。二枚舌とやりあう自国の総理を二枚舌と批判する野党や、国民に本当の事を説明しろと迫るメディアである。交渉の手の内をさらせと迫るメディアが世界中にあるだろうか。この国の弱さはその辺りにある。



TPPに関しては、与野党含めて議論百出で賛否両論が相半ばしています。新聞は左寄りの朝日から右の産経までオール賛成。先週の「ビートたけしのTVタックル」に三橋貴明氏が出演していたことには驚きました。昨年7月の参院選で自民党が、この三橋氏を比例区の候補に立てたときにもビックリしましたが。こういう国家社会主義者は信用できない。
『「TPP開国論」のウソ』のウソ

池田信夫氏の「TPPは経済的には大した意味がないが、アジアの経済統合を日米基軸で進める日米経済同盟としての外交的な意味は大きい。」という意見には同意したい。


日米同盟としてのTPP
2011年11月19日

自民党の青年局長になった小泉進次郎氏は、谷垣総裁が「米国と組み過ぎて中国やアジアをオミットするのは日本にとってよくない」などと発言したことを強く批判し、「日本の経済も外交も日米が基軸だ」と強調した。これはいいポイントだ。TPPは経済的には大した意味がないが、アジアの経済統合を日米基軸で進める日米経済同盟としての外交的な意味は大きい。

およそ政策らしい政策のなかった自民党が戦後、日本をここまでにしたのは、日米同盟という政策が正しかったからである。これは今では当たり前に見えるかもしれないが、日本の「論壇」ではサンフランシスコ条約の前から、社会主義国も入れた「全面講和」を結んで「非武装中立」で行くべきだという論調が主流だった。もし政府が全面講和の方針を取っていたら、いまだにどこの国とも平和条約は結べていない。

戦後の日本がアメリカによる一種の植民地支配のもとにあったとみることは可能だが、これはなんと鷹揚な宗主国だったことか。もし敗戦でアメリカではなく中国が日本を占領していたら、おそらくチベットのように自由も富も奪われているだろう。中国とは、数千年前からそういう国なのだ。

開かれた社会という点では西洋と中国は似ているが、法の支配と専制支配という点では対照的である。Jacquesもいうように、これはどちらがいいとも言えない。西洋の主権国家は、絶え間ない戦争を勝ち抜くことに最適化した軍事国家であり、非人格的な(国王によらない)法の支配は、貴族が国王と闘う武器だった。

これに対して中国では平和が何よりも重要と考えられていたので、内乱の原因となる貴族は10世紀までに絶滅され、皇帝が全国を直接支配する官僚支配が確立した。これに対して200~300年に1度、農民反乱が起こって新しい王朝ができるが、支配構造は同じである。現在の中国共産党はマルクス主義とは何の関係もなく、きわめて伝統的な中国の王朝である。


そこでは魯迅も嘆いたように、国家権力と個人が直接むきあい、個人が政治に翻弄される。毛沢東の行なった大躍進や文化大革命による死者は、合計1億人近いともいわれる。中国は、国家としての平和を守るためにおびただしい人命が皇帝の犠牲になる国なのだ。そして現在の王朝は、本質的に毛沢東の時代と変わっていない。

日本がアジアの経済統合を進めるとき、どちらの国を基軸にすべきかは明らかだろう。私はアメリカがすばらしい国だとは思わないが、国民を大量虐殺することはない。鳩山元首相など「東アジア共同体」を唱える人々は、言論の自由もない国との関係を基軸にした外交が可能だと思っているのだろうか。小泉氏もいうように、自民党は日米同盟を基軸にした積極的な経済外交を掲げて闘うべきだ。それが彼らの唯一の取り柄なのだから。



中国国内には、中国もTPPに参加すべきとする意見が出始めたらしい。その場合、TPP交渉で中国は主導権を握るべきだという思惑でしょう。日本ではTPPが実質日米FTAだと言われたりしますが、日本がTPP参加意向を表明し、これに続こうとする国が現れたことで、伝統的に孤立することを嫌う中国が動き始めています。TPPは中国排除や中国包囲網といったものではなく、もしかしたら中国までもが加わってくる可能性があります。 


米国、アジア太平洋新戦略 対中国封じ込め本腰 「空海戦闘」具体化急ぐ
2011.11.18

オバマ米大統領がアジア太平洋への関与拡大を最優先とする新たな外交戦略を発表した背景には、米国に代わり経済、軍事両面で新秩序の構築を狙う「ゲームチェンジャー」として台頭してきた中国に対し、軍事面で腰を据えて対処する中長期の戦略上の要請があった。

 イラク、アフガニスタンという2つの戦争にめどをつけたことから戦略的な方向転換が可能となった側面もある。ただ、これには、アジア太平洋地域での確固たる軍事的な裏付けが必要で米国防総省は「統合エアシーバトル(空海戦闘)」構想の具体化を急いでいる。

 構想は自らは空母を建造し、米国の空母には「接近拒否・領域拒否」戦略を進める中国軍を圧倒的な軍事力で封じ込めるものだ。

 中国は、小笠原諸島と米領グアムを結ぶ「第2列島線」を射程に収める“空母キラー”といわれる対艦弾道ミサイル(ASBM)配備を急いでおり、太平洋に展開する米軍にとって大きな脅威となる。

 米メディアなどによると、現行の空母11隻に加え、2015年と18年に新たに計2隻を就役させるほか、ステルス戦闘機を保有する空軍と隠密性の高い潜水艦の共同作戦を行う。

 また、中国軍の米空母への弾道ミサイルによる攻撃やサイバー攻撃を想定。逆にサイバー空間で反撃、中国軍の指揮系統破壊能力の向上を進めている。新型の長距離戦略爆撃機や空母搭載型無人戦闘攻撃機の配備も構想の柱だ。

 米国防総省は、中国軍が東、南シナ海だけでなく西太平洋、インド洋への空母派遣を目指していると分析している。オバマ氏は、日本、韓国、豪州といった同盟国との連携を深めていく考えを示し、関連海域での対中包囲網を拡大させる方針を明確にした。



中国 にじむ不快感 オバマ大統領演説に反発 
2011.11.17

中国外務省の劉為民報道官は17日の定例記者会見で、アジア重視を表明したオバマ米大統領の演説について「中国は正常な関係の発展について異議はない」と述べた。国営新華社通信も「米国は中国との協力継続を求めている」と強調したが、オーストラリア北部への米海兵隊の駐留計画が発表された後だけに、額面通りに受け取る向きは少ない。

 関係促進の歓迎を装った後、劉報道官は「アジア地域と他国の利益、平和と安定を考慮すべきだ」と続けた。中国は南シナ海や東シナ海の海洋権益拡大を目指している。考慮せよと迫っているのは「中国の利益」にほかならない。

 中国側は、海兵隊駐留の目的を米国の南シナ海における影響力の拡大と認識している。クリントン米国務長官に続き、オバマ大統領もインドネシアでの東アジアサミットで南シナ海問題を議題にする意向を示したことでもそれは裏付けられた。

 「平和的な中国の台頭を歓迎する」との言葉とは裏腹に、中国を抑止するために南シナ海問題への介入を進める米国に対し、中国が反発を強めるのは必至。新華社は他方で「オバマ氏の攻撃的な手段は時期尚早かつ危険だ」と強い言葉で批判している。



野田総理のTPP参加表明が、図らずも「日本の影響力」を世界に発信する結果になりました。

米国が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)に、日本が参加表明をしたとたん、カナダメキシコが参加意向を表明し、フィリピン台湾なども関心を表明しました。フィリピンパプアニューギニアも参加に意欲を示しているし、APEC加盟国ではない南米のコロンビアまで関心を持っているらしい。APEC閣僚会議で、カナダの担当大臣は「現時点では、TPP入りがカナダの国益に沿うのかどうか、我々は結論を出していない」と語ったばかりだったのに、日本の表明を受け、「今後のアジア市場の標準となりうるTPPのルールづくりにかかわらないと、取り残されるという思惑が働いたのではないか」(日本の経済産業省幹部)。ともあれ各国が日本の参加表明に刺激を受けています。尤も、日本・カナダ・メキシコが参加しない交渉9カ国の国内総生産の合計は16兆8400億ドル(1296兆円、2010年)で、世界に占める割合は27%ですが、日本・カナダ・メキシコが加わると24兆9100億ドル(1917兆円)となり、世界経済の40%を占める巨大経済圏が誕生するそうです。

最も刺激を受けたのは中国でしょう。刺激と言うより「日本がTPP参加意向を表明し、これに続こうとする国々が現れたこと」に対する懸念。中国は、米国主導の形で地域の自由貿易化や経済ブロック化が進むことを懸念していることは確かです。中国は、米国抜きのASEANと日中韓を加えたASEANプラス3の自由貿易協定(FTA)を主導したい考えらしい。米中が日本の参加をめぐって綱引きをする構図も窺えます。

野田首相と中国の温家宝首相、韓国の李明博大統領は19日、インドネシアのバリ島で会談し、日中韓自由貿易協定(FTA)の交渉開始を目指す方針で一致。野田首相は日中韓投資協定について「年内に実質合意できるよう協力を求めたい」と述べ、中韓両国も同意したようです。
FTA交渉開始目指す 日中韓首脳が一致


米中、アジア太平洋の主導権争い活発化 東アジアサミット前に
2011.11.16 [アジア・オセアニア]産経ニュース


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過去10年間、イラクとアフガニスタンの戦争に莫大な資源を投入してきた米国。今後10年間は、アジア太平洋地域で外交・経済などの投資を増やすことが政治の最重要課題の一つと宣言。米外交の重点を中東からアジアに移す考えを示しました。アジア太平洋地域には日本という同盟国と中国やインドなどの重要な新興国があります。この地域は世界政治を動かす鍵になってきていますからね。特に米国の安全や国際社会を脅かす国家として中国に警戒感を持っていると言われています。実際、中国は軍事・経済で超大国を目指しています。

しかし、米国の政治学者であり、リアリストとして有名なクリストファーレイン(テキサスA&M大学)教授は、その著書「幻想の平和」で、以下のように述べています。


「アメリカは、第二次大戦後、西半球を超えて、西欧、東アジア、ペルシャ湾地域で覇権(ヘゲモニー)を確立、維持することを大戦略としてきた。しかし、アメリカが将来、これらの地域で覇権を維持できる可能性は小さい。歴史は、覇権を追求すると必然的に自滅する。」

では、どうすればよいのか。

防衛の責任をそれぞれの地域の主要国家に移譲する。それは具体的には、たとえば東アジアにおいて、日米安保条約を破棄し、日本に海洋の安全、東シナ海における領土主権防衛、さらに核抑止の能力を提供するとともに、日本、韓国等、現在、アメリカの同盟国である国々がインド、ロシアなどとともに、潜在的な覇権国である中国とバランスするよう、促すことである。あるいは中東について言えば、アメリカは中東からの原油輸入依存を減らし、中東から撤退すべきである。

世界がこれから多極化に向かうことは疑いない。しかし、それでアメリカを中心とした世界秩序が終わるわけではない。

今週の本棚:白石隆・評 『幻想の平和』=クリストファー・レイン著 11月13日 毎日新聞

 

 

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